さっき、パソコンに向かっていると視界に大きな鳥の羽音。同時に「バン!」と大きな音がして、外を見ると玄関先にカラスが歩いてる。何かを狙っているようで、視線の先に何かがバタバタしている。ピンときた。「バン!」という音は小鳥が車庫にぶつかったんだ。
玄関で靴ベラを手にしてダッシュで掛け出た。するとカラスはそのバタバタしている何かにあと50cmのところまで迫っていた。わざと足音を立てて走り寄るとカラスは逃げて行った。「バタバタ」は仰向けになっている小鳥だった。たぶん脳震盪を起こしたんだろう。
我が家では大きな窓ガラスに時折鳥が当たってしまう事件が起こる。そのうち少ない数だけど数羽は死んでしまう。焦った。靴ベラで体を起こしてあげるとうずくまり肩で息をしている。そのうち大きく呼吸をして羽を広げ短い間隔で羽ばたくようにバタバタとした。
その姿は、以前看取った愛猫の最期を思い出させた。深呼吸を何回かして全身を痙攣させて何度目かで死んでしまった。だめだ、だめだ、死んじゃだめだ。何度も声をかけた。くちばしは地面にくっついたまま。その付近を蟻が横切っていく。野鳥に触れるべきではないとしばし悩んだけれど、意を決して鳥を抱え上げた。見たことがあった。たぶんシメという鳥。鳥は私が軽くくるんだ手のなかで、指を足の爪でしっかりと握ったのを感じた。「ああ、大丈夫かもしれない」
その子はまだ大きく息をしていた。カラスが近くの電線にいた。とりあえず玄関に入り母に「カラスから助けたんだけど・・・どうしよう」と見せた。まったく騒がず私の手のなかで瞬きをしていた。良かった。生きてるね。
家の中でそうしていてもしかたないので、カラスに狙われないようにパーゴラの下に椅子を置いて座ってみた。瞬きもするし母の手が近づけば威嚇してくちばしを構える。だけど手から放して服の上に自由にしてもいっこうに飛び立たず、あろうことか私の服の上でウンチした。それも二回も。母が言う「温かくて安心したんじゃないの?」(笑)
しばらくしてようやく私から飛び立ったけれど、パーゴラの茂みの中でまた動かない。母は家に戻ったけれど私は気が気じゃなくて30分くらい一緒にいて励まし続けた。「がんばれ。ぜったい飛べるから。がんばれ!」それでも飛び立つ様子は無く少しうずくまるようになってしまった。どうしよう。住宅街じゃ生きていけないかもしれない。山の中に放してあげようかな。
そう思って、車の鍵を取りまたその子のもとに戻り「山に行こう」と声をかけた瞬間のことだった。さっきまでよりずつと生き生きして首を動かしながらちょんこちょんこと小枝を進み、そして止まった。私が「飛べ~!」と小枝をゆすると飛び立った!なんだよ、飛べるじゃん!ヽ(・∀・ )ノ数十メートル先のよそんちの木まで飛んで行ってくれました。
よかった。よかった。きっとカラスに追われて方向感覚を失ってガラスに体当たりしたんだろう。元気になってくれてよかった。
つい先日のこと。友達を病気で失った。私より少し年上なだけの若すぎる死。だから野鳥のこととはいえ、今は無性に「死」ってもんが嫌だった。何が何でも生きてほしかったからなんだか必死になってしまったのかもしれないね。すこーしだけ重ねちゃったのかもなぁ。